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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)435号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人岡林靖、同佐竹晴記の上告趣意について。

しかし原審が本件において被告人が判示村分会副長に就任した事実をもって覚書該当者であるか否かを審査するにつき実質的牽連のある事項で追放令一六条一項一号にいわゆる「調査表の重要な事項」に該当すると判断したのは所論引用の当裁判所の判例に則した判断であって毫も右判例と相反する判断をしたものであるということはできない、従って論旨はその理由がない。

次に刑訴四一一条の問題として被告人が判示分会副長に就任した事実が果して「重要な事項」に該当すると認むべきか否かについて考えてみると昭和二二年閣令内務省令第一号はその別表第一に覚書該当者としての指定をすべき基準を示しその七号に「その他の軍国主義者及び極端な国家主義者」を挙げ、その備考として「この号に該当する者としての指定は個人的審査に俟たなければならないがその審査の基準は概ね次の通りとする」と規定し帝国在郷軍人会については昭和一二年七月七日と昭和二〇年九月二日との間において「都市区町村連合分会長又は市区町村分会長の地位に在った者」と挙示し分会副長を挙示していないのであるが右の基準は一応の基準であって結局個人的審査に俟たなければならぬ事項である、従って帝国在郷軍人会の村分会副長の地位に在った者でも在任中の活動状況等によっては覚書該当者として指定されるおそれが多分にある地位にあるものといわなければならない、それゆえ村分会副長の地位は前示閣令内務省令第一号の一応の基準の中に入っていないという一事をもってその地位に在った事実は覚書該当者であるか否かを審査するにつき実質的牽連のない事項と即断することはできないのであってその地位に在った事実は実質的牽連のある事項で調査表の重要な事項に該当すると解すべきである、然らば右と同趣旨に出たと認められる原判決には法令の解釈適用を誤った違法なく従って刑訴四一一条を適用する場合にもあたらない。

よって刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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